先日、出来立てホヤホヤのTOHOシネマズ日比谷にてスティーブン・スピルバーグ監督最新作『レディ・プレイヤー1』を観てきました。
IMAX・3Dで締めて2,700円、しかし結果、お釣りが山ほど返ってくるぐらいの大傑作。
公開から一週間も経っていないとは言え平日夜の劇場はいっぱいのお客さん、エンドロール明けの客席のザワつきが「スゲェ…」「ヤベェ…」という感じでとても気持ちの良いものでした。
同監督の作品『ペンタゴン・ペーパーズ』も同じく公開中で、どちらかと言えばそっちの方が自分好みっぽさそうだなぁ…なんて考えていたけど、せっかくのシネコン大スクリーンIMAX公開中とのことでレディプレを選択。
複数回鑑賞にも耐えうる奥行きと手数の多さ、考察しがいのあるストーリーなんかも相まってこれはもう一度観て何か感想的なものをまとめねば、と思ったのですがついついガッツリ考えて書いてしまい時間がかかるのが自分の悪い癖で、ここは初見で得た衝動的な感想をつらつらと並べた方がいいなと思い筆を執った次第でおま。
以降壮大なネタバレあり。
鑑賞前の方は自己責任でお願い致します。
1.仮想空間『オアシス』の描写が凄い
こんなん改めて言うことじゃないけど、にしても凄い。予告トレイラーやキービジュアルを見て凄そうって思った方、その通りです。
さらに、3Dで見たことによってその効果は倍増。3Dメガネをかける、という行為も作中のバイザーのそれとリンクしてとても良い。
2.ジャンルギャグが面白い
タイムスリップものの時間ギャグ、宇宙ものの無重力ギャグなど、その設定により有機的に生まれるジャンルギャグ、VRギャグがとても笑える。
今作のボスキャラとも言えるソレントの社長専用VRカプセル。未来的でゴテゴテしたいかにも強者のイスと言ったマシンのしかしその横に、乱雑に破いた小さなメモに手書きでログインID、パスワードが書いてあるのにはかなり笑った。これは、ある。ある。
パーシヴァルとアルテミスのガレージでの意気投合シーンも楽しい。
好きなバンド、好きな映画でボーイミーツガールするのはナードと言わず全ての男の子の憧れだけど、まさか「好きなFPSは?」から「ゴールデンアイのチョップ縛り」なんてワードが飛び出してきたらそりゃもう惚れちゃうでしょう。でも気を付けろ、いつかその子の想い出とともに好きなバンドへの愛も持ってかれちまうに決まってんだからな!おっと話が逸れた。このシーンでも心拍数の差でひと笑い取ったりしちゃう。
あとは開始数秒で現れたスラム描写にいきなり吹き出してしまった。『8mile』よろしくアメリカ映画の貧困層の主人公はトレーラーハウスに住んでるのが王道ではあるが、まさか2045年のアメリカではそのトレーラーハウスを上方向に積み上げているとは!(笑)九龍城砦かよ!と思わずツッコミそうになった。あの街の姿もとても笑えて、でも人々が懸命に生きてる姿や色んな背景も見えて、良い。
3.小ネタに必然性があって、良い。
80'sポップカルチャーをこれでもか、と過積載させた今作だけど、これが物語や設定や意味的にも色んな効果を生み出していると思う。
そしてそのほとんどが、加点要素なのも優しい。基本見つけられなくても楽しめるけど、見つけられた人には「アッ!」というご褒美をくれる、作中のイースターエッグを見つけるという動機にもリンクして「発見の喜び」に満ち溢れている。
やり込みゲーならぬ、やり込み映画と言ったところか。
ポップカルチャーに傾倒してきたオタク…いや、語弊があるかもしれないので、ここではあえてブレイブメンと呼ばせて頂こう。そのブレイブメンにこそありがとう!と言っているような、監督や80年代ポップカルチャーからの感謝の気持ちが見える。
終演後、近くに座っていたブレイブメン風の3人組が細部についてあーだこーだと盛り上がっているのを見て、単純に羨ましいなぁと感じた。そう、これはあなた達の話だ!
4.VRバイザー&スーツを使った演出が素敵
仮想空間「オアシス」内へログインするのに必須のバイザー。これがなかなかいい演出をしてくれる。オアシスプレイ中の主人公ウェイドの表情を映した時に、半透明のバイザー内に同時にヒロインのアルテミスが映り込んでる画がいいんですわ。富野由悠季監督が劇場版イデオンでやってた、バイザー越しに対面の相手を映して二人まとめてワンショットで表情をとらえちゃうってアレと似てるんだけどちょっと違うのは、片方はバイザーを付けた【本人】を、もう片方はバイザー越しに見える【アバター】を映すことによって誰が何に惹かれてるのかが一目で分かる演出。これ以上は言うまい。シウマイ。
そして体感型のVRスーツも面白い。発想自体は特段珍しくもないんだけど、ガンショットされて吹っ飛んだり、股間を蹴られて股間の部分だけ律儀にダメージ演出が残ってたり(クソ!こんなことで笑ってしまうとは……)、そして何よりアルテミスとのデュエットダンスで身体に触られ「感じる…?」というのがもう、とってもとってもセクシーでいいんですよ。
身体のほぼ全ての部分がこのVRギアによって覆われているので仮想空間内で「体感」することが可能なのだが唯一、口の周りだけは現実でしか「感じる」ことは出来ないんですよねすっぴんだから。もうここまで来たら分かるな?それがなんなの?と聞いてくるようなおバカさんはキライよ!
5.新世代、新価値、テクノロジーや多様性に寛大なのが好き
こういった仮想現実、というかソーシャルゲームやネットワーク上での繋がりに対して、批判的だったり風刺するような作品ってのが多いんだけど、本作に関してはそうじゃないのが、好きです。
たかがゲーム、されどゲーム。
たかがインターネット、されどインターネット。
僕みたいなおじさんに入りかかる世代になると、新しいテクノロジーに対して生理的に嫌悪感を抱くことは良くありまして。
これはラジオからの受け売りなんですが、英国のSF作家ダグラス・アダムスの言葉で
・人は、自分が生まれた時に既に存在したテクノロジーを、自然な世界の一部と感じる。
・15歳から35歳の間に発明されたテクノロジーは、新しくエキサイティングなものと感じられる。
・35歳以降になって発明されたテクノロジーは、自然に反するものと感じられる。
・15歳から35歳の間に発明されたテクノロジーは、新しくエキサイティングなものと感じられる。
・35歳以降になって発明されたテクノロジーは、自然に反するものと感じられる。
というものがあります。
要するに、僕はこれから先に発明されたテクノロジーに対しては自然に反するもの、受け入れがたいものとしてとらえてしまう可能性が高いかもしれないのです。
テクノロジーの話からは少し離れてしまいますが、若者の間で圧倒的な支持を得ているもの、例えばyoutuberになりたい!という考えに対しても多少の違和感を感じたりしてしまう。
しかし以前、よく知りもせず一方的にそういった文化を頭ごなしに否定するのも良くないなと、ニコニコ動画内で生配信ができるサービス通称ニコ生を利用してみることにしました。
想像力が未熟だった僕は「どーせニコ生にいるやつなんて…」という偏見に満ちた状態で飛び込み、そして実際にそういった人も沢山いる一方でしかし、この世界にこそ救われてる人、救っている人、そういうむしろ人間的な活動をしている人は更に多い数で存在することを実感しました。
実際、このニコ生の仲の良いグループでは引きこもりの子が社会生活に復帰したり、そこでの出会いが結婚を生んだり、いまだに僕のお芝居に足を運んでくれるやつらもいます。
クライマックス前のパーシヴァルも言ってたように、この世界にこそ救われている人だって沢山いるんです。ここがあるから、現実でも頑張れる。人口爆発、飢餓、環境汚染、嫌になっちまう現実から目を逸らすだけじゃダメだけど、ウェイド達のように仮想空間があって現実がある。現実があって仮想空間がある。お互い持ちつ持たれつになっている、そういう比較的新しい価値観を今年72歳を迎えるスティーブンスピルバーグ御大が肯定してくれるのがまた、いいじゃあないですか。「楽しむ」ことが出来るのも人間の特権ってやつですよ。
そして世界では戦争だなんだと対立し合ってるかもしれないけど、主人公たちHigh FIVEの五人が色んな国籍から集まってて、その中でポップカルチャー先進国からトシロウが活躍してるのも何だか誇らしいじゃないですか。「俺はガンダムで行く」日本語で言ってくれてなんか嬉しかったぞ。
6.デロリアンがRX-78が
僕の大好きなBTTFよりデロリアンが、機動戦士ガンダムからRX-78ガンダムが、動く動く!
なんなら原作より動いてるし!!
こんなに動くなんて知らなかったし、こんなに動く姿を見られるなんて。おじさん大号泣しちゃったよ。ゴジラ登場でゴジラのテーマ曲が流れるのもいいよね。
7.ハリデーのことば
そしてなんと言ってもこの映画の肝心要、キモはここ。オアシスの創始者として登場するハリデー。彼の生きてきた痕跡、オアシスに込めた想い、若者(主人公)たちにかける言葉、その全てがスピルバーグ自身の言葉として響いてくる。
もちろん原作があるお話だし、どこまで監督自身のパーソナルな想いとして語らせてるかは分からないけど、観てる方はどうやったってハリデー=スピルバーグとして観てしまうものだ。
エンターテイメント、ポップカルチャーのトップランナーとして数十年に渡って人々を楽しませてきたスピルバーグだからこそ、いや、スピルバーグにしか語り得ないであろう言葉の数々。「遊んでくれて(観てくれて)、ありがとう」
ハリデーの遺言がスピルバーグの遺言なんじゃないかとヒヤヒヤしたけど、来日の様子を見てるとかなり元気そうで何より。
物語の1/3辺りで「あれ……もしかして…これ、スピルバーグの話…?」というモードに入ってからはもうずっと、ずーっと涙が溢れて堪らなかった。
そしてパーソナルなスピルバーグ自身のお話には寄せ過ぎず、あくまでも映画的なフィクションドラマにしてくれてるのも楽しめて、いい。具体的にはハリデーとモローという共同制作者の友情の部分。若かりし頃のハリデー役の姿も相まって『ソーシャル・ネットワーク』でのfacebook創始者の二人のようにも見えたり。そして子ハリデーって主人公ウェイドにそっくりだったし、これって受け継がれてく「継承」のお話でもあるよね実際にオアシスの後継者にもなるし。そうなるとより遺言みたいになっちゃうじゃん……
と、こんな感じでガーっと殴り書いてみましたが、記憶もうろ覚えだし文法も解釈もむちゃくちゃだけど、熱さえ、熱さえ伝われば!と思いやす。劇場で、しかもIMAX・3D・4DXで観れるのは今だけなので、もし宜しければ是非ご検討頂ければと思います。今こそ観て欲しい!